訪日集客コラム
中国人観光客は日本食品のお土産をどう選ぶ?
- 訪日集客コラム
海外旅行では、現地での食事や観光だけでなく買い物も楽しみの一つです。特に、訪問先ならではのお土産を購入し、帰国後家族や友人にプレゼントしたり、自分用として楽しむ方も多いのではないでしょうか。
日本ではその土地ならではの魅力的なお土産が用意されており、その種類も多岐にわたっています。訪日外国人旅行者によるお土産の購入にはどのような傾向が見られるのでしょうか。
中国人観光客の定番の日本食品とは
お土産の定番といえばやはりお菓子などの食品と考える方が多いのではないでしょうか。
食品はお土産の中でも大きな部分を占める人気商品となっています。
お土産として購入された食品としては、「チョコレート」 の割合が最も高く、次いで「ビスケット・クッキー」、「清酒」の順となっており、お菓子は主力商品となっています。
一人あたりの購入額が最も高い中国の平均購入額は 28,000円以上(2018年農林水産省委託事業 アンケート調査)と高額です。
外国人観光客は日本らしきものを買う傾向にあり、清酒、そば(乾麺・半生麺)や味噌といった日本ならではの食品が目立ちます。
特にアジア圏からの訪日客は、リピーターも多いことから価格よりも珍しさを重視して選ぶ傾向があるようです。
果物や生鮮食品については、国によっては持ち込みが制限・禁止されている事や、賞味期限が短い場合が多いものの、旅行中に現地消費(地産地消)の対象としての購入が増えています。
また、購入額で見ると「健康食品(妊産婦用食品)」「乳幼児食品(ミルク・離乳食等)」も上位に入ってきます。これも日本食の品質や安全性の評価が高い日本ならではですね。
よく利用されるお土産の購入場所とは
これらのお土産を購入する場所ですが、ほとんどの品目において宿泊施設周辺、空港や観光地にある「スーパー」、「百貨店・デパート」、「専門店」が利用されています。
同様に「ドラッグストア」および「コンビニエンスストア」でも日本食を購入している方が多く、旅行者の購入店舗に関する発言からは用途に応じて使い分けをしている傾向が見られます。
購入店舗に関する訪日旅行経験者の発言
- ドラッグストアで粉末飲料や栄養ドリンク、健康食品を買った。(中国/関連意見複数)
- 菓子類をコンビニで購入した。(タイ/全対象国・地域で関連意見複数)
- 自分用の食品はほとんどスーパーやドラッグストアで購入した。友達等に贈呈するお土産は空港免税店等で購入した。(中国/関連意見複数)
- 観光地では現地の特産品を購入した。(台湾、韓国)
- わさび等の日本食品はオーガニックストアや専門店で買った。(韓国、豪州)
お土産の購買にあたっては日本をイメージさせることおよび希少性(例えば母国で入手困難、限定販売など)を重視し、「日本のお土産」として購入する傾向があるため、日本全国どこにでもあるコンビニやドラッグストアもお土産の購入場所としては利用しやすい場所と言えるのかもしれません。
お土産選びにも使われる「口コミサイト」の影響力
日本のお土産と一言で言っても、その種類は非常に多く選ぶのも大変です。購入にあたって最も参考にした情報は、「自身による試食」、「家族・知人の口コミ」、「口コミサイト」がほとんどです。
飲食店選びにおいて「口コミサイト」による事前の情報収集は当たり前となっており、その影響力は非常に大きいものと言えますが、お土産の購入においても「口コミサイト」が活用されています。旅行前から事前に情報収集をしておき、実際には訪日中に購入商品を決めているようです。
「口コミサイト」を参考にした情報に関する訪日旅行経験者の主な発言
- 贈呈用のお土産はインターネット上の情報と友達の口コミを参考に訪日前に 購入することを決めた。(中国)
- 一緒に日本へ行った彼女は YouTube や SNS で見たことがあるものとしてお菓子キットを購入していた。(豪州)
- ロイズは前もらったことから味が分かっていたので試食はせず、Pan tip(タイで人気の掲示板サイト) で同じものを調べてから買った。(タイ)
商業施設や小売店への外国人観光客集客という点でも、現地で有名な口コミサイトや SNS などオンラインでの情報発信が非常に重要と言えます。
しかし、クチコミ等による販売誘発効果が大きいため、売れ筋商品が一層偏ってきているという現状もあります。
これらのデジタルメディアを通してどこでも買えるタイプではない、立ち寄った地域で購入していただけるような「日本の地域別特産品」の知名度を上げることは、「地産地消」の取り組みや地域の活性化にも繋がります。
自商品で外国人観光客にウケる売れ筋商品が何かを調べていくことも重要です。
「パレートの法則」
一般に、小売業では2割の商品が8割の売上を叩き出す法則が成り立つとされ、
いわゆる「売れ筋」の商品が限られてくる。
商品にも求められるインバウンド対策とは
お土産などの商品自体への多言語対応もまだ不充分なところも多く、不便さを感じている外国人観光客も多くいるようです。
他言語対応に対する改善点や希望に関する訪日旅行経験者の発言
- 観光情報は多言語化が進んでいるのに、食品の情報は多言語化されていない。(韓国)
- 翻訳アプリを使うことで言語の問題に対応したが、できれば英語や中国語の説明を付けてほしい。最低限は英語が必要と考える。(台湾)
- ベジタリアンなどのために、多言語での説明やピクトグラムを使用した説明があると良い。(台湾/台湾、豪州で関連意見複数)
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飲食店でのメニュー同様、商品情報に関しても多言語化に対するニーズは非常に高いと言えます。商品パッケージに写真やイラストが掲載されているものであればある程度中身の想像はできますが、例えば贈呈用に丁寧に包装された和菓子などは購入をためらってしまうケースも考えられます。
全てを多言語化するのは難しいですが、一部のお土産店などでは試食が用意されているなど対策されています。 多言語化しなくともアレルギー表示のアイコンを追加することなど、国内向けにやられている購買促進対策はインバウンド対策にもなりますので、オンラインなどで事前に伝えることは誘客に効果的です。その他にも、例えば「お湯」を用意しておくといった簡単で効果的なインバウンド対策もあります。中国では冷たい飲み物は好まれず、常に熱いお湯やお茶を飲むためどこの店でもお湯が提供されているそうです。「インバウンド集客」は課題が多いですが、お土産店では試食と合わせてウォーターサーバーやポットを設置する、飲食店では夏でも暖かいお茶を提供するなどといった小さなおもてなしだけでも充分なインバウンド対策になります。
日本ならではの美味しく、質の高い食品が、訪日旅行の楽しみのひとつとしてより多くの外国人観光客の方々に楽しんで頂けると良いですね。
この記事のまとめ
- 日本土産の主力商品はお菓子。「健康食品(妊産婦用食品)」「乳幼児食品(ミルク・離乳食等)」も人気となっている。
- お土産の購入には「スーパー」、「百貨店・デパート」、「専門店」だけでなく、「ドラッグストア」や「コンビニエンスストア」が利用されている。
- お土産の販売促進にも、現地で有名な口コミサイトや SNS などオンラインでの情報発信が非常に重要となっている。
- 「試食の用意」、「アレルギー表示(ハラル含む)」、「無料の白湯」は外国人観光客への集客と販売促進として効果的。
参考文献
農林水産省「訪日外国人旅行者のお土産購買行動」