訪日集客コラム
「コロナ禍」でも長期的な視点でインバウンド対策を進めるべき理由とは
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世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大し、今までのように気軽に海外旅行には行けない状況が続いています。航空会社や旅行会社、宿泊・観光施設などは非常に大きな打撃を受けることとなりました。日本では観光産業支援のための「Go To トラベル事業」も始まり、国内旅行の予約は増えつつあります。
「Go To トラベル」事業とは
Go To トラベル事業は、宿泊を伴うまたは日帰りの国内旅行を対象に代金総額の1/2相当額を国が支援する事業で、観光地全体の消費を促すことで、地域における経済の好循環の創出が目的です。支援額は1人一泊あたり20,000円(日帰り旅行については1人あたり10,000円)が上限となっており、給付額のうち70%は旅行代金の割引に、30%は旅行先の土産物店、飲食店、観光施設、交通機関などで幅広く使用できる地域共通クーポンとして付与されます。
旅行を趣味とする方だけでなく、家族・友人・恋人が海外で生活している方などもいます。海外旅行のハードルが一気に上がってしまった今、私たちが日本からいつ海外に行けるのかはもちろんですが、いつになったら外国人観光客が日本に入国できるようになるのかも気になるところです。インバウンド需要回復のために欠かせない今後の入国制限解除はどうなっていくのでしょうか。
今後の入国制限解除はどうなるか
日本政府は、入国制限を段階的に緩和していく方針で検討を始めています。具体的には、ビジネス目的の経営者や専門人材をまずは優先的に緩和し、その後留学生や一般観光客と段階的に入国が許可される対象範囲を広げていきます。
また、対象国としては、マレーシア、台湾、カンボジア、ラオス、ミャンマーの5カ国との間で駐在員など長期滞在者の出入国が再開されると発表されている他、韓国や中国とも協議が進められています。(2020年9月1日時点)もちろん、これらの対象に含まれていても、訪日にはPCR検査が陰性であったことの証明書の提出や、入国時の空港での再検査の実施などが必要となっています。
ビザについても、ベトナム・タイからのビジネス目的での長期滞在者向けに訪日ビザの発給が開始されています。さらに、一定の条件はあるものの在留資格を持つ外国人の再入国も可能となりました。日本だけでなく世界各国での感染拡大が収束したとは言えない状況ではありますが、すでに外国人が日本に入国できるよう対応を進めているとも言えます。
日本の総人口の変化とインバウンド対策
「コロナ禍」と言われる状況にある中で、引き続き政府も長期的な視点でインバウンド対策を進めていますが、その大きな理由のひとつには日本の総人口の変化が挙げられます。
今後日本では人口減少と高齢化が確実とされていますが、それは国内の消費の減少にも繋がります。インバウンド政策を政府が推進する理由の一つに、外国人観光客が日本の各観光地で買い物をしたり、飲食をしたりといった経済効果への期待があります。
「明日の日本を支える観光ビジョン」に掲げている訪日外国人旅行消費額の2030年の目標値は15兆円です。これは、2019年の実績である4.8兆円の約3倍もの数字が設定されています。このことからも、日本の観光立国への動きは変わらないと考えられ、ランドマークになりうる大型施設や公共施設の増設が継続されていることも注目すべき点だと言えます。
長期的な観光市場の拡大に向けて
観光庁は今年7月、新たに「観光ビジョン実現プログラム2020」を発表しました。これは、2016年策定の「明日の日本を支える観光ビジョン」を受け、今後1年の政府の行動計画を示したもので、コロナ禍における対応を確実に進めつつ、インバウンドの回復に向けた方針が盛り込まれています。(参考:国土交通省 観光庁 「観光ビジョン実現プログラム2020」について)
国内の観光需要の回復と観光関連産業の体質強化
- 新型コロナウイルス感染症の影響により、観光需要が大幅に減少し、観光関連産業に深刻な影響が生じている。
- このため、まずは雇用の維持・事業の継続の支援に注力するとともに、反転攻勢に転じるための基盤を整備し、感染の状況等を見極めつつ、強力な国内需要の喚起策を講じ、国内観光の回復を図る。
- その上で、国・地域ごとの感染収束を見極め、誘客可能となった国等からインバウンドの回復を図る。
また、インバウンド促進については、「国内外の感染症の状況を十分に見極めつつ、インバウンドの再開に備え、これまで進めてきた受入環境整備や新たなコンテンツづくりに引き続き戦略的に取り組む。」とし、新型コロナウイルス感染症の状況に応じ、弾力的に取組を進めていくと発表されました。
インバウンド促進に向け引き続き取り組む施策
- 外国人が楽しめる当たり前の受入環境整備(英語・中国語を含む多言語解説の整備 / 無料Wi-Fiの環境整備)
- 地域の自然、気候、文化の魅力を生かした 体験型アクティビティの充実(外国人のニーズに合った 商品の開発・販路拡大 / アドベンチャーツーリズムの推進)
- 宿泊施設等の再生・活性化(政府系機関の投融資等による 宿泊施設の再生・活性化)
- 世界水準のスノーリゾート整備(国際競争力の高い スノーリゾートの形成)
- 日本政府観光局の発信力強化(国立公園の大規模キャンペーン等)
- 富裕層が満足できるコンテンツづくり(地域の伝統文化の体験等)
「ニューノーマル時代」とも表現されるように、マスクの着用や、消毒の徹底、ソーシャルディスタンスを保った新しい生活様式が当たり前になりつつあります。これまでと同様に中長期的な視点でのインバウンド対策の実施に加え、新型コロナウイルス対策についても発信を続け、世界の中でも日本の各観光地が、より安心できる旅行先として選ばれるような取り組みが求められます。
この記事のまとめ
- 対象者の限定はあるものの、既に一部の国との間で出入国が再開され、今後も入国制限が緩和される方針である。
- 日本の人口減少による消費減少の対策のためにも、長期的なインバウンド対策が必要。
- 「観光ビジョン実現プログラム2020」では、コロナ禍における対応を確実に進めつつ、インバウンドの回復に向けた方針が盛り込まれている。